2025年05月14日

世界の科学技術アカデミー 04 国子監(開封と杭州)

世界の科学技術アカデミー 04 国子監(開封と杭州)
↑ 西晋武帝の司馬炎。こちらから転載させて頂きました。
世界の科学技術アカデミー 04 国子監(開封と杭州)
↑ 北京の国子監。明代のもので下記とは異なります。こちらから転載させて頂きました。
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このシリーズでは世界の様々な科学技術アカデミーを紹介しています。第四回目は中国の開封(北宋)や杭州(南宋)を中心とした国子監(Guozijian)です。

漢代に起源を持ちますが、西晋武帝(上図)の276年に正式に設置され、宋代(960-1279年)に最盛期を迎えたとのことです。

中国の最高学府であり、儒学教育だけでなく、天文学、数学、医学、工学などの実学も扱ったそうなので、科学技術アカデミーの範疇とします。また、司天監や工部などとの連携による「知識・技術の集積場」という性格も強かったようです。

宋代は中国の科学技術が飛躍的に進展した時代で、「中国のルネサンス」とも呼ばれるようです。また、中世中国で人口が最も多かった時期に相当するそうです。国子監やその関連機関(司天監や工部など)では、天文観測、暦法改良、数学、医学、印刷技術、火薬、羅針盤などの研究・実用化が推進されたとのこと。

天文学と暦法は宋代に革新されたようです。精密な天文観測が行われ、暦法が改良されて授時暦の原型が生れたそうです。また、蘇頌(Su Song、1020–1101)は1092年に世界初の天文時計塔「水運儀象台」を設計したとのこと。これは機械工学と天文学の融合の傑作とされ、20世紀には再構築されたようです。

数学については、秦九韶(Qin Jiushao、1202-1261)や楊輝(Yang Hui)らにより代数学や幾何学が研究され、『数書九章』などが著されたそうです。方程式や算法の進化が図られ、ヨーロッパで19世紀に発表された方法がそこには含まれているようです。

宋代は「四大発明」(羅針盤、火薬、印刷術、製紙術)の実用化が進んだ時期と言われています。国子監や工部はこれらの技術の標準化や応用を支援したようです。活版印刷(畢昇(Bi Sheng、972–1051)の陶製活字)は、知識の普及に革命をもたらしたとのこと。また、 学術だけでなく、灌漑、橋梁建設、兵器開発など実社会への応用が重視されるとともに、官僚や技術者の養成も行ったとされます。沈括(Shen Kuo、1031–1095)は 『夢渓筆談』を著し、地質学、気象学、数学、工学など幅広い分野の記録を残したそうです。これらの科学技術は、元代を通じてイスラム世界や東アジアに伝播したといわれます。

国子監では、天文学、数学、工学、医学が相互に連携し、理論と実践が結びつくという多分野の統合が特徴的だったようです。また、宋王朝の経済力と中央集権体制が政府支援を生み、科学技術の研究を支えたようです。さらに、印刷技術により科学書や技術書が広く共有されたということです。

理論よりも実用技術(火薬、印刷、羅針盤)に重点を置いたためか、残念なことに、科学的方法論の体系化(近代科学の萌芽)は弱かったようで、イスラム世界のような哲学的理論化は控えめだったとのこと。ですが、後のヨーロッパやイスラム世界にも影響を与えグローバルな科学史で重要な役割を果たしたとされます。

このシリーズはこちらに続きます(新しく投稿されるとそちらに飛びます)。このシリーズの初回はこちらです。
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Posted by 島田市岸町の工学博士 土屋昌弘(つちやまさひろ) at 06:11│Comments(0)島田科学技術教育振興会
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