2025年05月13日

「教えない」育成

↑ ビジャレアルCFのホームスタジアム。こちらから転載させて頂きました。
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驚きを覚えました。

と同時に、「しまったなあ」と感じました。このことにもっと早く気づいていればと後悔が生じました。

スペインのビジャレアル(Villarreal CF)というプロサッカーチームの育成方法の特色を取り上げたテレビ東京の番組「FOOT×BRAIN+」という番組を見ての感想です(本投稿最下部に当該YouTubeを引用しています)。優れた選手を輩出することで高い評価を得ているビジャレアルの育成システムの特色が取り上げられていました。そこに日本人女性が関与しているというのも驚きの一端ではありましたが、、。

私はサッカーの専門家ではないのですが、サッカーの選手育成手法には以前から興味を持っていました。大学で学生を指導する際にも「よかれ」と私が考える手法は取り入れさせて頂いていました。もちろん、創造性を誘う指導を心掛けたつもりです。

ですが、上記の番組で取り上げられた方針は採用しませんでしたし、そもそも、気付いていませんでした。

「教えた瞬間に相手は思考を停止する」というのです。

私は、これまでずっと、教えられた側が「教えられたことから思考を展開する」に決まっていると考えていましたので、「そうではない」とダメ出しされた気分になりました。

もちろん、育成年代のサッカー少年やサッカー少女と、20代の大学生・大学院生では環境も目標も異なるので、画一的な発想は厳禁です。サッカーの場合は自分で考えたことを試す機会が比較的頻繁に比較的短期間のうちに訪れますが、大学生・大学院生のすべてがその環境を得ているわけではありません。また、サッカーの場合には比較的若い時から「世界」を目指すエリート環境が与えられ、選手寿命も短いために目標設定を早くから求められます。これに対して、大学生・大学院生の目標設定は長期的です。

ただし、大学生・大学院生にも、教える側が「これは基本中の基本」と考える内容があります。それを「思考停止でもよいからなるべく短期間で詰め込む」方針で多くの場合に教育が行われます。「教えられたことから思考を展開する」に決まっているという前提に立つ方針です。

これは、しかしながら、多くの場合には「思考の展開の先は枝葉末節」に陥りやすいきらいがあるように思われます。

対して、「基本中の基本についても教えないで考えさせる」とする教育はどうでしょうか?基本知識獲得の能率が非常に低くなると思われます。教えられないから基本で迷いに迷うからです。ですが、思考を展開する対象は太い幹となるはずです。いわゆる「大物」に育つ可能性が生まれます。

ただし、守株待兎になるリスクは限りなく高まると思われますので、すべての若者に適用すべきかどうかはかなり怪しいと考えられます。それでも、教育の目的によってはこの手法の有効性が発現される場面があるのではないか、などと考えています。
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Posted by 島田市岸町の工学博士 土屋昌弘(つちやまさひろ) at 05:56Comments(0)島田科学技術教育振興会